国立大学法人岐阜大学 工学部 機械工学科 知能機械コース 松下光次郎助教が試験装置を開発し、性能の有効性を評価した膝サポーターが2017年2月中旬に発売開始されます。この商品はシリコーン等柔軟素材の形成加工・販売を手掛け […]
国立大学法人岐阜大学 工学部 機械工学科 知能機械コース 松下光次郎助教が試験装置を開発し、性能の有効性を評価した膝サポーターが2017年2月中旬に発売開始されます。この商品はシリコーン等柔軟素材の形成加工・販売を手掛けるタナック(岐阜市)が開発した「タフシロンR人工筋肉膝サポーター(アクティブ/ホールド)」。タナックは歩行ロボットの研究や運動解析に精通している松下助教に性能評価を依頼。松下助教は膝関節屈曲時を想定した回転負荷試験装置を開発し、タナックの新商品と他社の既存商品の弾力特性を解析しました。その結果、タナックの2種類の新商品の歩行動作に有効となりうる弾力性能の特色が考察されました。
松下助教は歩行ロボットの研究開発を手掛けており、歩行運動のメカニズムに精通しています。また、各種センサを用いた運動解析の経験や、そのためのハードウェアとソフトウェアを含めた統合システムの開発経験が豊富です。そこでタナックは新商品の性能試験装置の開発と有効性評価を松下助教に依頼しました。
<従来の膝サポーターの問題点の解決を目指してタナックが開発した新商品>
従来の膝サポーターには次のような問題点がありました。
・生地の張力には限界があり、しなやかさもない
・編み、生地補強では形状、張力のかけ方に制限がある
・締め付けが強いタイプには固定するものが多く動きにくい
・一日装着していると圧迫感が強すぎるものもある
⇒タナックはこれらの問題を解決する、膝蓋骨の安定と動きやすさを両立させる膝サポーターを実現するために、高柔軟性・高伸縮性の立体シリコーン素材を用いて製品開発を行いました。その結果生まれたのが、「タフシロンR人工筋肉膝サポーター(アクティブ/ホールド)」です。
「アクティブ」は歩行時の膝への負担を緩和したい方、長時間歩行をする方やウォーキングをする方向けの商品。
「ホールド」は歩行、椅子からの立ち上がり、階段の上り下りにおいて膝に負担を感じている方向けの商品です。
<負荷性能評価装置の開発および計測>
膝にサポーターを装着した際の膝の屈曲時の負荷をあきらかにするために、膝関節を模したモデルにもとづく関節回転負荷試験装置を開発しました。この装置は、歩行ロボット開発技術を活かして生地との干渉を避けるための関節構造を有し、また運動解析技術を用いて磁気式モーションキャプチャにて膝屈曲角度、6軸力覚センサにて膝への回転負荷の計測を可能としています。タナックの2種類の新商品と、他社4社の既存商品について、測定を繰り返し行いました。
<松下光次郎助教による膝サポーターの性能評価のまとめ>
性能評価の結果、タナックの2種類の新商品はいずれも有効な弾力性能が考察されます。
1.他のサポーターと比較し、膝曲げが少ない部分からのサポート力が大きい
①直立姿勢で膝伸展を保持しやすい
②歩行の際、着地前の膝伸展をサポートするので、足運びにおいて膝を伸ばした状態のスムーズな着地をうながしやすい
2.膝曲げが大きくなる(屈曲角度90度付近)で、サポート力の強さが一定になる
③膝を大きく曲げた状態のとき比例的な大きな回転負荷力がかからないため座りやすい
【松下 光次郎(まつした こうじろう)助教 プロフィール】
岐阜大学 工学部 機械工学科 知能機械コース 助教、博士(工学)
<略歴>
生年月日:1977年8月23日
2000年 東京理科大学 工学部 機械工学科 卒業
2001年 スイス Zurich University,Informatics, Artificial Intelligent laboratory, 研究員
2003年 英国 Sussex Univerisity, Informatics(修士課程修了)
2007年 東京大学大学院工学系研究科 博士課程修了
東京大学大学院工学系研究科 日本学術振興会特別研究員(PD)
2009年 東京大学大学院工学系研究科 特任助教
電気通信大学 知能機械工学科 特任助教
大阪大学医学系研究科 脳神経外科学講座 特任助教
2013年 大阪大学医学系研究科 脳神経外科学講座 特任講師
2014年 岐阜大学工学部 助教、現在に至る