「広める価値のあるアイデア」を発表する、米国発の世界的なプレゼンテーションイベント「TEDx」の名古屋大学版、今年で第5回目となる「TEDxNagoyaU」の2017年版が7月9日に名古屋大学野依記念学術交流館で開催され […]
「広める価値のあるアイデア」を発表する、米国発の世界的なプレゼンテーションイベント「TEDx」の名古屋大学版、今年で第5回目となる「TEDxNagoyaU」の2017年版が7月9日に名古屋大学野依記念学術交流館で開催されました。9名のスピーカーが価値のあるアイデアの「種」を発表し、事前申込のおよそ100名のオーディエンスに共感が広がりました。
TEDxNagoyaU2017のテーマはSeed(種)。向日葵の一粒の種が一輪の花を咲かせ、500粒の種を作る。その種が再び花を咲かせ、500粒ずつの種を作ると、たった2回の循環で25万の花になる。そのように、アイデアの「種」が、やがて無数の大輪の花を咲かせるようにとの願いを込めました。
登壇したスピーカーは、あいちトリエンナーレにも携わったアートキュレーター、ジェンダー問題に取り組む名大付属高校生、風船を使って宇宙の撮影に取り組む名大大学院生、ブルガリア出身で男女平等に取り組む生物学教授、ブレイクダンサー弁護士、ドイツで行動認識と認知科学を研究する若手研究者、東日本大震災や異文化交流に携わる臨床心理士、IT企業で働き方改革プロジェクトに取り組む女性、世界を繋ぐアートプロジェクトに取り組む南山大学生の計9名。
スピーカーは実行委員会が独自の基準で選出。毎年、学生(小中高含む)スピーカーオーディションを開催しており、今年は5月21日のオーディションで2名のスピーカーを選出しました。
オーディエンスは、協賛企業関係来賓、大学関係来賓、一般申込者を含めておよそ100名。プレゼンテーションの合間に、オーディエンスどうしの交流プログラムが企画され、意見交換がなされました。
●スピーカーのプレゼンテーマ、プレゼン概要、プロフィール
1.服部 浩之
【テーマ】
どこでどう生きるか、アートから考えてみる(アートと人生にかけた想い)
【プレゼン概要】
どこでどう生きるかを問うことがアート。山口県で住んでいたシェアハウスに、少し「はみ出した」場所や活動をして、近所の人が集い、飲み会や映画鑑賞会、子どもの工作体験や展覧会を開いたりして、地域のアートセンターになっていった例を紹介。どこでどう生きるかを、それぞれが問うて、創造性を活かしてほしい。
【プロフィール】
インディペンデント・キュレーター。1978年愛知県生まれ。早稲田大学大学院建築学専攻修了。山口県の公立アートセンター、国際芸術センター青森を経て、あいちトリエンナーレ2016にキュレーターとして関わり、地元愛知県に拠点を移す。今年から秋田公立美術大学大学院准教授として教鞭をとるかたわら、アートラボあいちディレクターとしてアートセンターの運営にも携わる。東アジア、東南アジアを中心に、展覧会やプロジェクト、リサーチ活動を展開。
2.大友 志穂
【テーマ】
Towards Gender Equality(ジェンダー平等に向けた実践)
【プレゼン概要】
若い世代ほどジェンダーへのステレオタイプな考え方を持っている。男女役割交換プログラムに取り組んだ人は、ジェンダー平等を理解してもらいやすい。ジェンダー平等への活動について、一緒に一歩を踏み出してほしい。
【プロフィール】
名古屋大学教育学部付属高等学校1年。2001年愛知県生まれ。5歳から10歳まで中国で現地の学校に通い、国際色豊かな環境で男女平等の考えを身につける。帰国後、学校や日本社会における男女の差に疑問を持ち始める。女優のエマワトソンが国連で行ったジェンダー平等に関する活動を知ったことをきっかけに、本格的にジェンダー平等について調べ始める。今年の春、外務省および日本国際連合協会主催の国連訪問団へ中学生代表として参加。独自に「男女役割交換プログラム」を考案。
3.桑村 航矢
【テーマ】
宇宙とあなたのキョリ(宇宙開発とその展望)
【プレゼン概要】
宇宙との距離は縮まっている。学生も進化している。名古屋大学で学生の宇宙開発チームNAFTの設立メンバーとして5年間取り組み、スペースバルーンによって宇宙の360度映像を撮影した。多くの人に宇宙に興味・関心を持ってほしい。
【プロフィール】
名古屋大学工学研究科 航空宇宙工学専攻修士2年。1993年生まれ。愛知県出身。2012年に「宇宙を身近に感じてほしい」と立ち上げた名古屋大学宇宙開発チームNAFT(ナフト)に創立メンバーとして参加。「スペースバルーン」という気象観測用の高度30kmの成層圏まで浮上することができる特殊な風船を使って宇宙の映像を撮影するプロジェクトに、エンジニアやプロジェクトリーダーとして取り組んでいる。2016年6月に日本初の成層圏の4Kのバーチャルリアリティー映像の撮影に成功。
4.マリア・ヴァシレバ Maria Vassileva
【テーマ】
Success, Failure and the Theory of Relativity (日本における真の成功とは何か)
【プレゼン概要】
人生の成功とは何か。自分の人生の成功面も失敗面も両方が私。成功、失敗というのはどう見るか次第。自分の目標にたどり着くまでの経験こそが大事。いろんな経験をすると目的も変わるかもしれないが、それでもいい。自分がその時点でやりたいことにチャレンジしてほしい。
【プロフィール】
名古屋大学理学部生命科学特任教授、生物学者、獣医。ブルガリア出身。ブルガリアでは女性は普通に社会に進出しており、男女平等が議論のテーマにならないほど。教授職にもたくさんの女性が就いている。専門は栄養、公衆衛生などの研究だが、男女平等に対する活動にも積極的に取り組み、自分と同じワーキングマザーのサポートに尽力している。
5.石垣 元庸
【テーマ】
~『ある』を活かす~(自身の特徴を捉え直すブレイクスルー)
【プレゼン概要】
高校時代は成績が悪かった。ブレイクダンスに出会ってからも、オリジナリティを打ち出せなかった。ある世界的ダンサーとの出会いから、自分の中に「ある」を活かすことに気づいた。司法試験も、自分が考えてしまう特徴を生かして、暗記をせずに考える学習で合格した。自分の中に「ある」を活かすことを意識してほしい。
【プロフィール】
弁護士、ブレイクダンサーBBOY NONman。1978年生まれ、名古屋市出身。大学在学中にブレイクダンスに出会い、BBOY NONman(ノンマン)としてブレイクダンスチーム「一撃」に所属。2005年には世界大会「Battle of The Year」に日本代表として出場し、準優勝およびBest Showを獲得。その後、弁護士を志し、2010年に司法試験合格。ブレイクダンサーの経験を活かし、風営法違反を理由とした警察によるクラブ摘発事件等に取り組んでいる。
6.石丸 翔也
【テーマ】
Cognitive Cyborgs (テクノロジーと人間の相互成長)
【プレゼン概要】
目の動きを計測し、心の状態を表す「心温計」や1日に読む単語量を推計する「万語計」を開発した事例を紹介。「シンギュラリティ」が注目されているが、Cognitive Cyborgsの考え方では、人間はAIを拡張知能とすることができ、AIが進歩した分、人間の知能も進歩する。それを実現できるような研究開発をしてきたい。
【プロフィール】
ドイツ人工知能研究センター(DFKI)研究員。カイザースラウテルン工科大学リサーチアソシエイト。1991年愛媛県生まれ。行動認識と認知科学を専門とする研究者。慶應義塾大学KMD研究所リサーチャー、大阪府立大学客員研究員を経て、現在はドイツで人間の能力を拡張する技術の研究に取り組む。2015年度IPA未踏事業(経済産業省 情報処理推進機構の人材発掘事業)にて心の状態を可視化するシステム「心温計」を開発し、高評価を得て「未踏スーパークリエーター」に認定される。
7.黒川遼太郎
【テーマ】
「嗚呼と」(アートの2面性)
【プレゼン概要】
私はアートは「嗚呼と」、つまり感動した時に思わず声を上げてしまうものだと定義する。今、「Spredding love」というアートに取り組んでいる。「あの人へつなぐ」というメッセージが書かれた一輪のお花を見知らぬ他人に渡すというもの。お花を受け取った人は、自分が思い浮かべるあの人へ渡す。お金のためでも名誉のためでもない。これが世界中に広まれば、世界は変わる。
【プロフィール】
南山大学経営学部経営学科3年。1996年生まれ。大学在学中、アートが社会問題を解決する大きな可能性を秘めていることに気づき、さまざまなアートプロジェクトを日本とアジアで開催。今年6月には、一輪の花をただ笑顔で道行く人に配るというアートプロジェクトを名古屋・東京・大阪・韓国・フィリピンで開催。今年9月からはイギリスのリーズ大学に留学し、イギリスを拠点に、世界を繋ぐプロジェクトを展開する。
8.伊藤 直子
【テーマ】
働き方改革のその先へ
【プレゼン概要】
働き方改革でいろいろな取り組みをしても、「言いたいことが言えない」、「自分で自分の枠を作ってしまう」、「個々の能力を引き出すより底上げをしようとする」という意識や風土があると、個々の能力を引き出せない。働き方改革の先に行くためには、「空気を読むよりも目標に向けて効率よくする」、「枠を超えて成長する」、「受け入れる風土を持つ」これらのことが大事になる。
【プロフィール】
1967年鹿児島生まれ。高校卒業後、東京の大学へ。システム会社に就職したが、2年後結婚のため名古屋に移り、システム会社に就職。2度の合併を経て、東京に本社がある日立ソリューションズとなる。現在は名古屋と東京を毎週往復する日々。2年前から働き方改革プロジェクトに入り、自社の改革推進とともに、自社での取り組みを活かして企業の働き方改革を支援する事業に携わる。
9.掛井 一徳
【テーマ】
心の成長の秘密 ~葛藤を支える心の器~
【プレゼン概要】
あるキャンプをきっかけに、子供が本当の意味で選択できる状況を作っていくことで、心が成長することを発見。相手の心を受け止めるには心の器が大きくないといけない。その器を大きくする方法は、ネイティブアメリカンに学んだ「それもアリ!」と肯定すること。
このように困難を肯定する力を持ち、周囲の人を支えられる人が増えていってほしい。
【プロフィール】
異文化からの視点を取り入れたコミュニティー支援に取り組む臨床心理士。1973年生まれ。山梨県で精神科病院での勤務を経て、「かけい臨床心理相談室」を開室。東日本大震災後に石巻ボランティアセンターで活動。また国際医療NGOの現地スタッフとして南三陸町でコミュニティーカフェの運営、音楽イベントの開催など、コミュニティー支援に重心を移す。福島で被災した子供たちのトラウマケアを目的としたキャンプに参加し、子どもの心の回復をコミュニティー全体で支えるアプローチを行っている。また世界一周の船旅をする洋上グローバルスクールにカウンセラーとして参加、さまざまな国における異文化交流を通して、独自の臨床スタイルを構築。
●TEDxについて
TEDはTechnology(テクノロジー)、Entertainment(エンターテインメント)、Design(デザイン)の頭文字。1984年にアメリカで始まったプレゼンテーションのカンファレンスで、毎年開催されています。「価値あるアイデアを広める」ことが目的で、過去にはビル・ゲイツやビル・クリントンなど著名人も数多く登壇しています。「18分以内のプレゼン」というルールで自分のアイデアを的確に聴衆に伝えるのが特徴。また「TEDx」は、同じ目的で世界各地で独自に開催されているイベントのことで、名古屋以外にも日本各地で開催されています。
●TEDxNagoyaUについて
TEDxのイベントを名古屋大学で開催しようと、名古屋大学などの学生を中心に2013年からスタート。名古屋大学の他、中京大学、南山大学、名古屋工業大学、愛知大学、名古屋学院大学、愛知淑徳大学など愛知県内の大学の学生によって運営されています。2015年から高校生スピーカーも採用し、若い世代のアイデアも積極的に広めていきたいと考えています。
●TEDxNagoyaU2017実行委委員会
TEDxNagoyaU 実行委員会は 2013 年に発足し、名古屋大学の後援を受けて活動しています。メンバーは名古屋近郊の学生によって構成されています。今年は29名の実行委員が運営に携わりました。
●TEDxNagoyaU2017実行委委員会
<代表>
豊田 翔大(名古屋大学)
<副代表>
藤井 美有(中京大学)
井澤 宏太(名古屋工業大学)
<渉外>
長谷川 優香(名古屋大学)
<会計>
河野 巧(名古屋大学)
<実行委員>
杉浦 匠(名古屋学院大学)、坂元 律矛(名古屋工業大学)、伊井 はるか(中京大学)、
石原 由佳(名古屋大学)、山田 明里(名古屋大学)、布一 慶奈(名古屋大学)、
伊藤 友梨香(名古屋大学)、小倉 梨緒(愛知大学)、嶺木 理沙(南山大学)、
今井 萌乃(南山大学)、冨岡 万琴(中京大学)、Sharma arun(名古屋大学)、
石川 祥子(名古屋大学)、今村 真梨香(名古屋大学)、田窪 千愛(愛知淑徳大学)、
金岡 優依(名古屋大学)、坂倉 波輝(名古屋大学)、坂口 和香奈(名古屋大学)
千葉 悠希奈(名古屋大学)、井上 祐介(名古屋大学)、田中 亮丞(名古屋大学)
鈴木 愛乃(南山大学)、堀 涼(名古屋大学)、加藤 友梨