株式会社シムスバイオ

プレスリリース

2020年7月30日
Press Release

シムスバイオが日本ジェネティクスを引受先とする第三者割当増資を実施、機械学習性能を備えた「卓上型細胞自動培養装置」の開発に着手

細胞培養機器の製造販売や医療施設向け再生医療支援を手掛ける株式会社シムスバイオ(名古屋市、以下「当社」)は、このたびライフサイエンス研究専門商社の日本ジェネティクス株式会社(東京都文京区)を引受先とする第三者割当増資によ […]

細胞培養機器の製造販売や医療施設向け再生医療支援を手掛ける株式会社シムスバイオ(名古屋市、以下「当社」)は、このたびライフサイエンス研究専門商社の日本ジェネティクス株式会社(東京都文京区)を引受先とする第三者割当増資により、3,000万円の資金調達を実施しました。今後、当社製品の細胞塊大量培養・分化誘導マイクロプレート「TASCL(タスクル)」について、日本ジェネティクスを通して国内外の研究機関への販売を強化します。また、当社は今回の増資を機に、TASCLを基盤とする細胞培養の機械学習性能を備えた「卓上型細胞自動培養装置」の開発に着手します。当社は今後、他企業からの更なる資金調達や技術協力も求めます。

 


図1:細胞塊大量培養・分化誘導マイクロプレート「TASCL(タスクル)」


図5:TASCLを用いた細胞塊(胚様体)培養の機械学習

 

●再生医療、がん治療、創薬などで注目される細胞塊
「細胞塊(さいぼうかい)」(「スフェロイド」または「胚様体」とも呼ばれる)は、細胞を三次元培養し、数千個の細胞の塊にしたものです。近年、再生医療において細胞塊の有用性が注目されています。現在、国内外の多くの研究機関において、様々な臓器の再生医療のために、心筋球、神経球、肝臓原器、膵島、毛包原器、軟骨や半月板の細胞塊など、各臓器の細胞塊を培養・移植する研究が行われています。細胞塊は再生医療以外にも、治療法の研究や薬剤開発にも用いられます。がん治療の研究には、がん細胞のスフェロイドが利用されています。薬剤のスクリーニング試験にも、動物実験の代替として細胞塊の活用が期待されています。

 

 

●均一な大きさ・形状の細胞塊を大量培養するマイクロプレートTASCL(タスクル)
再生医療に細胞塊を用いるには、まず、大きさや形状が揃った細胞塊を大量に用意する必要がありますが、それは容易ではありませんでした。この問題を解決するために開発されたデバイスが、細胞塊大量培養・分化誘導マイクロプレート「TASCL(タスクル、Tapered Stencil for Cluster Culture)」です。TASCLは、東京大学大学院 情報理工学系研究科システム情報学専攻 講師 池内真志(当社取締役)、名古屋大学元教授・一般財団法人グローバルヘルスケア財団 理事長 林衆治(当社会長)を中心に開発されました。
TASCL本体はシリコーン製で、微細加工技術によって、16.65cm四方に約1,000個または約600個の精巧な格子状のマイクロウェル(細胞塊を培養する穴)が設けられています(図1)。マイクロウェルの壁面はテーパー状で、底面は貫通しています。TASCLは半透膜のカルチャーインサートの上に載せられ、それが6穴プレートに設置された状態で、6個1セットの商品パッケージになっています(図2)。

 


図2:TASCLの商品パッケージ1セット

 

 

TASCLで細胞培養をする際には、6穴プレートにTASCLと同じ高さまで培地(細胞の成長に必要な成分が含まれる液体)を注入した後、一定の濃度の細胞混濁液をTASCLの上から注ぐだけで、重力により細胞がTASCLのマイクロウェルの底辺に均一に沈降し、そこで細胞塊が形成されます(図3)。どのマイクロウェルも培養条件がほとんど変わらないため、細胞塊の大きさがほぼ均一な形状になります。TASCL底面の貫通孔から半透膜を通じて培地やガスが循環し、細胞塊を新鮮な状態に保ちます。このため細胞塊を1カ月程度にわたり培養することができ、容器を替えなくても細胞の分化誘導を図ることができます。表面は細胞非接着性のコーティングが施されており、細胞塊の回収も容易です。培地はマイクロウェルに直接注ぐ必要がないため、培地交換の際に細胞塊が流出するトラブルを防ぎます。TASCLが透明なシリコーン製のため、細胞塊をTASCLに載せたまま顕微鏡で観察することもできます。
TASCLにはTASCL1000ウェル(1024ウェル、定価1セット19,000円)とTASCL600ウェル(621ウェル、定価1セット20,000円)の2タイプがあります(図4)。

 

図3:TASCLによる細胞塊培養の断面図

 


図4:TACL1000ウェルとTASCL600ウェルによる細胞塊のサイズ比較

 

【TASCLのメリット】
①ほぼ均一な大きさの細胞塊を一度に大量培養できる・・・1セット(6個)で約6000個/約3600個
②細胞の状態を長く良好に保つことができる ・・・底面が貫通しており、ガスや培地が循環するため
③分化誘導ができる ・・・1ヵ月間の長期培養ができるため
④トータルコストを削減できる ・・・小さく高密度のウェル構造で器材や培地・試薬を節約できる
⑤開封してすぐに使える ・・・タンパク質防付着処理済、滅菌済み、予め器材セット済み
⑥簡単に使える ・・・細胞懸濁液を上から播種するだけ(遠心分離不要)、培地交換も容易
⑦観察が容易にできる ・・・TASCLに載せたまま細胞の顕微鏡観察も可能
⑧細胞塊の回収が用意 ・・・ピペットで吸い取るだけで取り出せる
他に、共培養の細胞塊も培養しやすい、極性を持った細胞塊を培養できる

 

 

●細胞培養の機械学習機能を備えた卓上型細胞自動培養装置
細胞塊を移植治療に用いる際には、細胞塊を大量に用意した上で、さらに、不良の細胞塊を除去したり、胚様体のサイズをある程度一定に揃えたりすることが求められます。従来、このような細胞塊の確認・選別作業は、人海戦術か、高額な装置を導入して対応する必要がありました。これは再生医療が高額になる要因の1つとなっています。
当社はこれらの作業を安価に自動化することを目指して、TASCLを基盤とした、細胞培養の機械学習機能を備えた卓上型細胞自動培養装置の開発に着手します。本装置が実装を目指す機能は、細胞塊を培養・分化誘導する過程で、品質が悪い細胞塊を早期に除去する機能。また、細胞塊の大きさに応じて成長因子の投与量をコントロールし、細胞塊の成長を調整する機能です。これらの機能を備えた、小型で安価な装置の開発を目指します。細胞培養の機械学習においてはTASCLの特長が役立ちます。TASCLは16.65㎝四方に約1,000個または600個という高密度で細胞塊を培養でき、細胞塊の位置はマイクロウェル内に保持されています。これらにより、機械学習に必要な細胞塊の培養過程の時系列像を効率よく大量に取得することができます(図5)。

 

【会社概要】
日本ジェネティクス株式会社
本社所在地:〒112-0004 東京都文京区後楽1-4-14 後楽森ビル18F
設立:1988年11月22日 代表者:代表取締役社長 山崎 一夫
事業内容:ライフサイエンス研究専門商社
TEL:03-3813-0961
FAX:03-3813-0962
URL:https://www.n-genetics.com/

 

株式会社シムスバイオ
本部機能・名古屋オフィス:〒464-0858 名古屋市千種区千種 2-24-2千種タワーヒルズ1F
東京オフィス:〒113-8485 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学南研究棟301号室
設立:2018年7月11日
代表者:代表取締役社長 門脇 純
事業内容:細胞培養機器の製造販売、医療施設向け再生医療支援
TEL:050-7115-9215
FAX:03-6800-2548
URL:https://cymss-bio.com

 

【お問合せ】
株式会社シムスバイオ (担当:門脇)
TEL:050-7115-9215
FAX:03-6800-2548
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